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きもの情報誌『月刊アレコレ』編集長のきものと締め切りの日々。

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和裁士さんの悩みのほんとうの意味。

仕立てイメージ 

先週。

編集部に和裁士さんから電話がありました。

「月刊アレコレで【暖簾の向こう〜】を連載しているひつじやさんに質問があるのですが・・・・」

さて和裁士さんが質問したいその内容とは――、

お客様でお茶をなさる方がいます。
正座が多いのでどうしても背縫いに力がかかって糸が引っ張られるので、
縫い線がヨレヨレに波打った感じになってしまいます。
ふくよかな方ではありますが・・・・どうにかならないかと相談を受けたのですが、
これといった解決策をみつけられなくて・・・・・。
月刊アレコレを見たときに、連載しているひつじや店主がとてもお詳しそうなので、
なにかヒントを得られればと思いました。

もちろんひつじや店主は多忙の中、僕は縫い子さんではないけれどと、
前置きをしながらも丁寧に答えくれました。  その状態を「ヘバレ」というそうです。

結論としては袷ではそれ以上の手立てが難しく、後ろ幅寸法に余裕を見るくらい。
単衣ならば補強をするということで、
  背伏布 → 共布 → 居敷あて → 大居敷あて
右にいくほど補強の度合いが強くなるけれど、
背縫いを二度縫う方法や、細かく縫う方法は布を裂いてしまうので、お勧めしないとのこと。
ひつじやでは大概は、広幅羽二重の大居敷あてをつけるとのことでした。
その付ける範囲は好みによって調整するそうで、細かな点もアドバイスしてくれました。

上記をその和裁士さんに戻したのですが・・・・・
お話しているうちに今どきの仕立て事情が浮き彫りになってきました。

まずひとつは仕立てる側の傾向。

最近、後ろ姿をシュッと細く見せるために
   【後ろ幅を小さめに仕立てる】方が少なくないとのこと。
背縫いが中心から動かないようにしたいのだそうです。
初めて聞きましたというと、「結構いるんです」
「それがふくよかな方だと、どうしても背縫いにストレスがかかってしまうのです」  
当然でしょうね。

どうやら、件のお茶の方もそのお1人のよう。・・・・それは、なおさら問題^^;
でもそのお客様に広くしたほうがいいと、伝えられないと。

その伝えられない詳細を聞くと、どうやら伝えられないのは呉服屋さんの担当者のよう。
  言いにくいのか・・・・・  それがどういうことか認識できていないのか・・・・・

・・・・・という話からが、第二の本題です。(長くてすみません)

直のお客様にはきちんと必要な寸法を採寸して、必要な情報を得ることができるけれども、
お店からの下請けでは担当者からの情報しかありません。
情報が少なくてとても悩んでしまうことがあるというところから、

 担当者にこれこれ、こういう情報も取っていただけますかと、頼めないのですか?

そこで「あること」が見えてきたのは、どうやら担当者が「寸法」のことや「仕立て」をお客にアドバイスするほど、和裁士に注文をつけるほど、知識がないのではないかということ。
だから和裁士さんが必要とする寸法の意味が分からない。採寸できない。聞けない・・・。

誤解を招かないように先に言っておくと、多くの女将さんがいるような呉服屋さんはそういうことはありません。
ひつじやさんのように、その店の仕立てのノウハウを持って、和裁士さんにきちんと伝えています。

しかし、何店舗も持っているような大手の店頭の担当者は(もちろんすべてとは言いませんが)、例えば

  「胸囲を測るときも、下着をつけたままのいちばん高い、バストトップを採寸するんです」

それが何が問題かというと、大概きもののときは胸を平らにするための和装ブラ。
「上げて、寄せて、高さを出して、谷間を作る」洋装ブラとは決定的に違います。
その寸法で仕立てると、抱き幅が余分になり、余計なシワやたるみの元になります。

「でもバストサイズといったら、普通バストトップでしょう?」というらしい。
そうではなく「胸囲」を図ってほしいんですよね・・・と縫い子さん。
つまり、身幅と抱き幅の関係とか、裄の長さと身幅の関係とか、そして裄が長くて身幅が細い場合、その差をどこで吸収しているのかとか、そういう仕立ての基本をわかっていないから、必要な情報や、その人なりの寸法の問題を汲取れないということなのだと、みえてきました。

ヘバレに戻すと、通常よりふくよかな方が、通常より後ろ身頃を狭くして正座し続けるリスクや、
さらには腰紐の位置が低ければなおさら、そのひっぱられるストレスを吸収する範囲が狭いわけで、そのあたりの着方との関連もその担当者は思い浮かばない・・・・のでしょうねー。

大きなため息をつきながら
「やっぱりそのお客様には後ろ幅に少し余裕をとったほうがいいですよと伝えていただくしかないですよね」

問題は、背縫いの「ヘバレ」より、その決まりきった解決策を伝えられない担当者じゃないかと、20分という長電話のなかで感じたわけです。

ご清聴ありがとうございます(笑)。


2011.05.09 Monday 11:39comments(7)↑ページの先頭へ

コメント

なるほど〜!
確かに大手チェーン店の店員さんって
仕立てについては 全くの素人さんですよね(笑)
って言うか 着物も着てない店が多いし・・
和裁士さんも大変ですね・・・

こぱんだ|2011/05/09 10:59 PM|

こぱんださん

こんにちはー

そうなんですよね、一概に言えないといいつつ、
かなり高い確率で、チェーン店って言えるんです。
和裁士さんを大事にしないところはダメですね。(ーーメ

|みやざ|2011/05/10 12:34 AM|

こんばんは。本当にそう思います。和裁士さんを大事にする店はお客様も大事にするから、つぶれないのだと思います。それにしてもひつじやさんの一言にはギクッとしました。後姿をすっと見せるあまり、後幅を細くされるお客様…には私も気を付けようと心に留めておきます。何せ、私もふくよかなほうなので。チェーン店に行かなくてよかったです。
この和裁士さんの記事、絶対にアレコレに乗せた方がいいです。こういうことはたくさんの着物好きの方々に知って欲しいからです。

|妖怪|2011/05/10 9:27 PM|

妖怪さん

ありがとうございます。
そうですね、着る人が作る雑誌。
それは着る人と、きものに携わる皆さんへの
メッセージとして届くようにしたいと思います。

|みやざ|2011/05/11 12:39 AM|

今日は。はじめてお邪魔します。まず最初はあまりにも突飛なことを言われない限りはお客様のおっしゃることを優先した方がいいと思います。それで具合が悪くて相談を受けた折に売り手側の考えを述べられるのがベターではないでしょうか。ただ、私自身が感じますのは着物は後ろ幅も前幅も広い方がほっそりと、後ろ姿がシュッと細く見えるように思います。脇縫いがなるべく前の方にあって、立褄が十分後ろまで巻き付く方が下半身を細く華奢に見せているように見えます。着物の場合、細く見せようと前後身頃の幅を狭くするのは逆効果で、ふくよかな方はよりより図太く、華奢な方も太く見せてしまうのではないでしょうか。着物は大きめに仕立てた方が着やすいし、細く見えるということをお伝えするとよろしいのではないかと思うのですが。

|〇たりろ|2011/05/21 8:39 PM|

〇たりろさま

コメントありがとうございます。

>脇縫いがなるべく前の方にあって、
立褄が十分後ろまで巻き付く方が下半身を
細く華奢に見せているように見えます。

脇縫いが真横より少し前に来たほうがほっそりみえると
いうのは、一衣舎の木村さんがご自身の本の中で
おっしゃっていました。
私自身、和裁はまったくできない人間なので、
着る立場としてのごく一般的な知識しかないのですが、

>後ろ幅も前幅も広い方がほっそりと、後ろ姿がシュッと細く見えるように

脇線のことも納得がいきつつ、身幅が広いほうが
細く見えるというのは目からウロコです。
いろいろな考え方はあると思いますが、
あらためて、仕立ての奥深さに感じ入ります。

|みやざ|2011/05/21 9:59 PM|

背中心は袋縫いのほうが背伏せを付けるより強位です私の知り合いの縫い子さんはそうしてくれます

|青井万恵|2016/11/26 10:58 PM|

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